現代の社会を形成する社会主義と資本主義という社会構造。
そこに多大な影響を与えてると言われ、大ベストセラーにもなっているマルクス著の「資本論」。
世界を変えた本の一冊として池上彰さんが解説を紹介します。
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第一回目の解説記事はこちら。
エンゲルス
第一回目でマルクスが訴えたいとする資本主義の闇の部分はわかりました。
さて、そこで一つ面白いことがあります。
実はマルクスにを支持してくれていた友人にエンゲルスという思想家がいました。この人は経済的にマルクスを援助し、資本論の出版を助けたとされています。
しかし、このエンゲルスは父親が大企業の向上の経営者であり、結果的にその工場を継ぐことになります。
つまり、資本論で言うところの資本主義社会の最大の悪い点、労働という資本を作り出す資本家として活動し、自身は資本主義経営をしながらいかに資本主義がひどいものであるかをマルクスに説いていたのです。
これによってマルクスは資本主義社会の実態にリアルに触れることが出来たのですね。しかし、資本主義社会であるがゆえに、お金は重要アイテムになります。それを多く生み出すには資本家になる必要があります。このエンゲルスの生き方というのは非常にリアルでシビアで皮肉的なものですね。笑
「資本論」は3部構成になっていますが、実はマルクスが生前の際に出版されたのは1部のみ。
マルクスの死後、原稿をまとめ、編集して2部、3部を出版したのがこのエンゲルスなのです。
社会主義革命
「資本論」の一説を引用します。
巨大資本家は(中略)いっさいの利益を奪い取り、独占していくのだが、それとともに巨大な貧困が、抑圧がそして隷従と堕落と搾取が激しくなる。
だがまた、資本制的生産過程のメカニズムを通じて訓練され、統合され、組織化され、増加する一方の労働者階級の糞がいも激しくなる。(中略)
資本制的私的所有の終わりを告げる鐘が鳴る。収奪者たちの私有財産が剥奪される。
「資本制的私的所有の終わりを告げる鐘が鳴る。」という一説は、ユダヤ・キリスト教の「最後の審判」ということになります。
つまり資本主義の下で労働者は抑圧され、無知に追いやられるだけではなく、皆で仕事を共有することで突出した能力があるものがリーダー的存在へ繰り上がり、組織的な抵抗運動をするために能力を高めることもでき、こうした労働者たちが資本家たちをやっつけ、世の中をひっくり返すことが起きるとマルクスは言っているのです。
マルクスの分析によって「資本主義は極めて非人道的な経済体制」であることが明らかになりました。こうしてその資本主義社会とは別物である社会主義はずっといいものであると考えられていました。
こうして社会主義革命が起こっていくことになります。
しかし、歴史の跡をたどれる我々はその社会主義に変換していった国家が悲惨な失敗を遂げたことを知っていますよね?
では、社会主義とはどのような問題があったのか。
社会主義国家が失敗した理由
ソビエト社会主義共和国(1917年~1991年)
真っ先にマルクスの考え方によってつくられた国がソビエト社会主義共和国(1917年~1991年)になります。国を率いたのはソ連の初代最高責任者であるレーニン。資本主義へと切り替わった現在のロシアにおいてもこのレーニンの銅像などはいたるところに残っているそうです。
「レーニンの時代はよかった」と感慨にふけるものも多くいるということなのですね。
そして第2代の最高責任者となったのはスターリン。
レーニンの時代にはまだ自由な風潮が蔓延していたのですが、スターリンに切り替わってからは徹底的な言論統制の社会に変わっていきました。
こうした変化はソ連をとりまく資本主義国家からの資本主義的な思想・考え方が流入することにより、反革命的な動きが起こることを恐れた結果なのです。加えて社会主義に切り替えたソ連が経済的にも優位であることを周囲に示す必要がありました。
そこで着手するのが、農業の集団化。全ての農地を国有化し、農民を平等な「労働者」にしようとしました。そのために大地主は殺してしまうという処置をとって・・・。こうして労働者に格差が生まれない労働者のために理想の社会を謳ったのです。
しかし、その理想と現実はこうなりました。
つまり、本来土地を持って生産をする場合は、その地で獲れたものは自分のものになるため、それを利用してお金を稼ごうという意識が働き、なんとしてでも作物を守って生産性を上げようという思考が働きます。
しかし、集団農場の場合は農民が「国家公務員」という扱いになります。すると生産を上げなくても最低限のコアタイムに労働をしていれば生活は保障されているために、生産性を上げる工夫は成されなくなっていくのです。
これは地主を排除した政策もあだになりました。農業に対して知識が豊富な人間がいなくなってしまったのです。
結果的に1932年にはソ連の一部であったウクライナで大飢饉が起こり、死者は1000万人以上に及びました。
マルクスの分析では資本主義社会の下では資本家たちが激しい競争を繰り広げます。その結果「過剰生産」が起きます。しかしその裏で労働者たちは過酷な労働を強いられます。ここに需要と供給に大きな差が出て不況に陥る場合があり、最悪の際には恐慌が起きる場合もあるとしました。
それに習い、社会主義では国家が計画を立てて全てを計画生産すればいいと考え、実行しました。
しかし、これもまた裏目に出ます。
「ブーツを作れ」という指令に対し、
「ブーツを作ればいい」⇒「雨や風にさらされない靴があればいい」⇒「長靴で代用可能」
という思考になり、結果的に外観などは気にしない機能だけ搭載されている商品が完成します。しかし、購入者としてはこんなダサいものを着用したくはないわけです。つまり生産側に競争がない為に、「いいもの」を作るという思考にならないのですね。こうして商品が売れ残ります。
わかりますか?結局、資本主義でも社会主義でも過剰な供給が増え、資源の無駄遣いが起こるのです。
こうして1991年にソ連は崩壊するに至りました。
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中華人民共和国(1941年~)
1949年に建国された中華人民共和国。中国もまた社会主義国家として非常に有名ですね。初代最高責任者は毛沢東。
毛沢東が提唱したのは大躍進政策。
ソ連の第3代最高責任者であるフルシチョフは「15年でアメリカに追いつき追い越そう」というスローガンを掲げました。
それに対抗し中国は当時世界2位である経済大国であったイギリスに追いつこうとします。イギリスは当時鉄鋼業によって栄えていました。そのため、中国の指針として鉄鋼業に目を向けます。
こうして農民も鉄鋼生産に着手することになりました。各地に造られたのは土で作られたミニ製鉄所である土法炉。
これに使用する耐火レンガが必要なのですが、中国にはこれを作る知識がありませんでした。そこで目を付けられたのが長い歴史を誇る中国で作られた寺院に使用されているレンガ。
また、炉の燃料となる森林を伐採。これによって山々がはげてしまいました。今黄砂が飛んでくるという問題は、この時期の森林伐採によるところが大きいとされています。
そしてさらに問題となるのは、鉄を作り出すための鉄鉱石が中国にはありません。そこでそこら中にある鉄製品を炉の中に入れて溶かすという作業が起こり始めます。こうして農機具に使用されている鉄を溶かすのです。
どうなるかわかりますか?そう。中国から農機具が姿を消すのです。
明らかにおかしいのですが、絶対的なカリスマ性を持っていた毛沢東に対しては反旗を翻すことがあっては、生きてはいけません。こうして中国の社外主義もまた無理に無理が重ねられていくのです。
結果として毛沢東の死後、鄧小平によって実質的に資本主義へと転換していく運びとなりました。しかし実際に実施されている経済体系は「社会主義市場経済」という社会主義と資本主義が共存したかのようなもの。
つまり共産党の独裁政権の下での自由な資本主義経済です。これが現在の中国。
トマ・ピケティ著「21世紀の資本」
こうした社会主義国家は切り替えた当初としては経済が劇的に伸びたという歴史もあります。しかし、長期的には続くことが出来ないのです。
2008年のリーマンショックにより再び注目をそそがれるようになったマルクスの「資本論」。資本主義経済もまた、様々な矛盾を抱えている経済です。こうして、資本主義もまた永続的な体制ではないのでは・・・と考えられるようになったのですね。
また、トマ・ピケティ著「21世紀の資本」が出版されたことも資本主義について考えさせられる一つの要因となりました。
ピケティが100年以上にわたっての世界各国のデータを調査した結果産まれたのがこの公式。
rは株式などの資本から得られた資本収益率。gは国の経済成長率。つまり国の経済成長率よりも資本家が得る収益率の方が上であることを紹介したのです。
国の経済成長率というと貧しい人なども含まれているデータです。その伸び率よりも資本家の利益の増大率の方が大きいということは、資本家に一方的な富の蓄積があるということです。
まさにマルクスが言ってきたことそのものをデータによって立証したことになります。しかしマルクスはそれがゆえに資本主義社会は打倒すべきと主張しましたが、ピケティは
「資本家の利益を国が税金として取り上げよう」
「gを高めrを意図的に減らして格差を少しでも減らすべき」
という意見を述べるのです。
以上、池上彰さん解説「資本論」でした。

第一回目の解説記事では資本主義経済の悪いとされる点を指摘したため、社会主義というものに非常に興味が出たのですが、やはりどっちつかず・・・。
ここには人間の欲望と堕落・・・人間性と言うのが大きく関わっているように感じます。特に、過剰生産になってしまうという共通の問題点が、違う角度から引き起こされるというのはなかなか面白いところですよね。
ピケティの新たな提唱も面白いですが、資本家からは文句が出てきそうな・・・笑
でも、無駄に高級車を何台も乗るよりかは社会貢献になるのかな・・・。でもでも、資本家たちは続柄が元々資本家なために努力をしない人もいますが、大抵は大きな努力の結果に今の地位がありますので、搾取するのも可哀想という思いもありますね。
人間が生きる上で生じざるを得ない数々の問題の一つとして、今後も資本主義経済に対して色んな討論は成されるのでしょう。
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収入税や経費課税による≪民主効率主義経済≫や≪愛情主義経済≫は、どんなもんなんでしょうか??
マルクスの著書「資本論」は、資本主義という社会を透徹した目で、客観的、科学的に知ろうとしたものと理解しています、また、理論は端緒についたところで、まだまだ探求され続け、発展していくものでしょう。資本主義社会が、人間の理性でコントロールされなければ、今社会に未来がないことは、さまざまの現象が示していますし、人間性を奪って荒廃していく危険性も示しています。
貧富の格差、地球温暖化、資源の枯渇、戦争の不可避、・・・・等々、
社会の大きな変革が成功しなければ、破滅的な運命にあることは、避けられません。
ただしこれらは、長期の時間がかかる問題です。人類は進めるべき方向を探求しつつ、資本主義を克服して、社会主義社会へと進みさらにもっと新しい社会へと進みます、資本論は、その先駆けとなる重要な道しるべではないでしょうか。